南北海道注目の食トピックス【地域の取り組み】
1.魅力ある商品づくりと地域ブランドの創出。北海道の食の未来を切り開く取組

北海道産食品のトップランナー「北のハイグレード食品」
北海道産食品の魅力を広めることを目的に、北海道にある無数の美味しい食品の中から選りすぐりの逸品を選定するのが「北のハイグレード食品」である。道内外の一流シェフや流通・出版の第一線で活躍する北海道「食のサポーター」による審査を経て、毎年、選定されるのはわずか20品程度。
3つの厳しい基準「食の専門家が認める圧倒的な美味しさ」「安全・安心への徹底した品質管理」「ストーリー性やパッケージデザインを含めた高い市場競争力」をクリアした食品にのみ与えられる称号だ。選定された食品は、北海道を代表する「顔」として百貨店や高級スーパー、海外市場へと送り出される。
2025年には、減農薬栽培の希少種「ほおずり」を使った「完熟ほおずり林檎ジュース」や、地元の酒粕を生かした「酒粕あいす郷宝」などが、南北海道から選出された。
北海道の食産業を担う人材育成「地域フード塾」のネットワーク
2013年度から実施している「地域フード塾」は、食に関連する事業者がマーケティングや商品開発、経営戦略を学ぶための研鑽の場である。単に知識を学ぶだけでなく、地域特有の資源を有効に活用した魅力ある商品へと磨き上げるための3カ年計画を策定するなど、極めて実践的なカリキュラムが組まれている。修了生は2024年までに300名以上にのぼり、道内各地で食のキーパーソンとして活躍している。
また、塾では生産者、加工業者、流通業者、飲食店主など、食のバリューチェーンに関わる多様なプレイヤーが同時として学び、個々では解決困難な課題に対してチームで挑む土壌が作られ、事務局や専門家講師ともつながりができる。培われたネットワークは修了後も継続し、地域の枠を超えた連携や新たな商品の共同開発や販路開拓へと発展している。この強力なネットワークこそが、「トップランナー」同士の化学反応を引き起こし、北海道全体のブランドの底上げにもつながっている。
高い目標を示す「北のハイグレード食品」と実力とネットワークを育む「地域フード塾」。これらが両輪となり、未来のヒット商品や地域を支えるキーパーソンたちが次々と誕生している。南北海道が「食彩王国」としてさらなる高みを目指し、未来を切り開く競争力を生み出す鍵は、ここにある。
2.世界遺産の縄文を味わう「縄文ビール」と「函館縄文スイーツ」

縄文人も好んだ“栗”を使ったロマンあふれる「縄文ビール」
大型の復元竪穴住居が特徴的な函館市の「大船遺跡」や、国内最大級の大きさを誇るコの字形盛り土遺構がある同じく函館市の「垣ノ島遺跡」、日本を代表する集落遺跡として知られる青森市の「三内丸山遺跡」など、南北海道および津軽海峡を挟んだ北東北エリアには、多数の縄文遺跡が点在している。これらの遺跡を含む北海道・青森県・岩手県・秋田県に所在する17の遺跡が、「北海道・北東北の縄文遺跡群」として、2021年にユネスコの世界文化遺産に登録された。
そんな縄文文化が花開いた函館で誕生したのが「縄文ビール」である。手掛けたのは、クラフトビール醸造所併設のレストラン「Endeavour(エンデバー)」と、縄文文化の魅力について地域へ発信している有志団体「縄文DoHNAN(どうなんプロジェクト)」。縄文文化を発信する方法を模索する中で、「縄文をイメージしたビールがあったら面白い」という話がきっかけで始まった。
このクラフトビールの副原料は、それまで自生していなかった北海道に持ち込まれ、縄文人が好んで食べていたと言われる栗。2020年に直営店で限定メニューとして提供を始め、それから3年間、お客様のフィードバックをもとにレシピの改良を重ね、2023年に「縄文MINORI」をリリースした。
華やかなホップの香りと風味のまろやかさがあり、口に含んだ最後にほのかに栗の香りが感じられる優しい味わいが特徴。縄文人がつないだ南北海道産の栗を用いた縄文ビールは、ロマンを感じさせる一杯だ。
1万年の時を超えた甘い記憶「函館縄文スイーツ」
函館の魅力を伝えるひとつのきっかけになればとの想いで、ビールと同時期に誕生したのが「函館縄文スイーツ」。世界文化遺産登録への機運が高まる2020年、「函館スイーツ推進協議会」が加盟する菓子店などに呼びかけ、取り組みが始まった。
北海道産の素材を使用するなどのルールのもと、縄文人が食べていたとされる栗やクルミといった木の実などを使ったスイーツ、2007年に北海道初の国宝として指定され、茅空(かっくう)の愛称で親しまれている「中空土偶」や縄文土器などをモチーフにしたスイーツなど、続々と商品化。バリエーションも豊富で、ケーキやクッキー、パフェ、まんじゅう、上生菓子など、各店の独創的なアイデアが、函館を訪れた人々を楽しませている。
3.サステナブルな美食の未来へ「食絶景」と「ゼロカーボン」への挑戦

食絶景北海道×ゼロカーボンアワード
豊かな水産物、広大な大地が育む農産物。南北海道の食文化は圧倒的な素材の力によって支えられてきた。その豊かさを次世代へと引き継ぐため、単なる美味しさの追求を超えた、環境との共生を目指す新たな挑戦が始まっている。その象徴的な動きの一つが、2022年度に創設された「食絶景北海道×ゼロカーボンアワード」だ。
「食絶景北海道」とは、道産食材の美味しさだけでなく、その背景にある豊かな生産地、信頼できる生産現場、食文化などのストーリーを発信する取り組みである。広大な大地や美しい海といった「絶景」そのものを食卓の価値として捉え、「北海道の食」をブランド化して発信する。
一方、「ゼロカーボン」は、脱炭素社会実現に向け、食のサプライチェーン全体で環境負荷を低減することを指す。食品ロスや製造・流通時のエネルギーの削減などによって、環境を守り北海道の豊かな「食」の土台を維持できる。また、価値ある「食」を追求する過程で出てくる規格外品や副産物を新しいグルメに変えることで、環境への配慮と食の魅力を同時に生み出すことができる。
道産食材の魅力を発信する「食絶景北海道」と、脱炭素社会を目指す「ゼロカーボン」を掛け合わせたこのアワードは、ゼロカーボン北海道に寄与し、北海道の食としての魅力を有する道産食品を表彰する、食の未来を支える取り組みだ。
北海道に広がるSDGs未利用のローカル食材の活用
前出のアワードを受賞した株式会社Local Revolution社は、急増し厄介者となっていたマイワシを、ごま油と塩だけで作るマイワシのアンチョビ「ハコダテアンチョビ」として商品化。環境・漁業被害を持続可能な資源循環の仕組みで解決した点など、柔軟な対応力と地域貢献が評価され、2025年には「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」でも最高賞のグランプリを受賞した。
カドウフーズ株式会社は、規格外のサツマイモやカボチャを引き取り、「はこだて雪んこ」や「カボチャの雪んこプリン」など、極上のスイーツへ昇華。農地のフードロスを減らし、サプライチェーン全体の環境負荷を低減している。これらの挑戦は、南北海道の食の未来を示しているといえる。



